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私立城ヶ崎学園理事長、城ヶ崎 鎮は悩んでいた。
「うーん、何か良い案はないものか。」
コンコン
「叔父様、お呼びになりました?」
ノックと共に現れたのは、桐生 菖蒲。
実はこの学園の理事長は、菖蒲の叔父にあたる。
このことは、学園でも一部の者しか知らない。
菖蒲の母の、弟である城ヶ崎 鎮は、全国チェーンのホテルやレストランを数多くかかえる、城ヶ崎グループのトップである。
やや道楽的に、学園の経営にも携わっている。
「ちょうど良いところに来た。ちょっと菖蒲ちゃんの意見を聞きたくてね。」
少しシスコン気味の城ヶ崎は、姉にそっくりな菖蒲をたいそう可愛がっている。
因みに百合音は父親似だ。
35歳、独身の彼には、沢山の見合い話が持ちかけられる。
しかし、姉以上の女性でなくては、と全て断っている。
「次の聖誕祭の企画なんだけど。」
「あぁ、もうそんな時期ですわね。」
聖誕祭と言うのは、城ヶ崎 鎮の誕生日である7月9日に、彼を楽しませる為だけに催される、生徒にとっては迷惑でしかない式典である。
毎年、城ヶ崎自身が考えた企画に、生徒が付き合わされる。
勿論、生徒にも何かしらの特典を与えてもいるが。
去年は部活動対抗で、代表者による人間双六が丸1日費やして行われ、優勝したテニス部には、雨天でも使用出来るように、屋根付きの新しいテニスコートが与えられた。
「私にいい案がありますわ。」
「ほんとかい。」
「えぇ、こんなのはいかがかしら。」
「・・・たまにはそういうのもいいかもしれないね。よし、では早速出場者を募ろう。」
「それは私に任せて下さい。」
「じゃあ、頼むよ。今から楽しみだね。」
フフフフ・・・
ウフフフフフ・・・
理事長室から不気味な笑い声が漏れ、前を通った生徒は気味が悪くなった。
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