城ヶ崎 鎮という男

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投票方法は、自分の良いと思う出場者の番号を書いて、投票箱に入れるというベタなものだ。 「集計が終了しましたので、結果発表に移らさせて頂きます。優勝・・・の前に、理事長たっての希望で特別賞が用意されました。特別賞は・・・」 発表を前に、会場が静まり返った。 「エントリーNo.3、尾川 誠君です。」 「えっ!?俺?」 「特別賞の誠君には、優勝者と同じように、理事長から学食の食券、1年分が贈られます。」 「ありがとう。楽しませてもらったよ。」 「ど、どうも。」 理事長から食券が手渡され、誠は恐縮してそれを受け取った。 「いよいよ優勝者の発表をさせて頂きます。」 会場に居るほとんどの者は、結果をわかっていた事だろう。 それほどまでに、圧倒的な人気を得ていた。 「優勝は、エントリーNo.32、モモさん!」 「えっ!?何で私?」 皆で私を担いでるのか? 「モモさん?ステージへどうぞ。」 「は、はい。」 とりあえずステージへ向かう。 「君は本当に男かね。」 ギクッ 女が女装なんて、ばれたら絶対笑われる。 「女装コンテストに女が出るわけないじゃないですか。」 内心ひやひやだ。 「それもそうだね。いや、君があまりにも綺麗だから、勿体ないと思ってね。とにかく優勝おめでとう。」 「あ、ありがとうございます。」 私が綺麗? 目の端に、ニヤニヤしながらこちらを見ている菖蒲が映った。 やっぱり、私を晒し者にして楽しんでるのだな、と思う。 こうして、今年の聖誕祭は幕を閉じた。 暫く学園内で、 「あの謎の美女は誰だ?」 と話題に上った。 しかし誰にも分からないのであった。 「桃ちゃんて、私いつも呼んでるのにね。何で分からないのかしら?」 と菖蒲。 いや、分からなくて良いから。 「ところで、デート何時にする?」 ・・・しないから。
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