城ヶ崎 鎮という男

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「桃ちゃん、こっちよ。」 菖蒲がそう言うと、メイド姿の使用人2人に、両腕を取られ、ズルズルと引きずられるように、ある部屋まで連れて行かれた。 来たことない部屋だな。 子供の頃からの付き合いなので、何回か遊びに来た事はあるが、これだけ広い家だ。 全ての部屋を把握しきれるわけがない。 子供の頃、この家でかくれんぼをして迷子になったっけと思い出す。 部屋の中を見渡すと、大きな姿見と、これまた大きな鏡が備え付けてある、鏡台が目に入った。 鏡台の前には高価そうな化粧品や香水、アクセサリー等が並んでいる。 身支度を整える場所?のようだ。 姿見の前に立たせられると、菖蒲が私に服をあてがって見せた。 片側に大胆なスリットの入った、真っ赤なドレスだ。 「やっぱり似合うわね。これにしましょう。さ、着替えて。」 「え?何で?てか、私そんなの似合わないよ。」 「つべこべ言わず、さっさと着替える!」 菖蒲に背中を押され、カーテンの引いてある、更衣室のような場所に押し込められる。 ・・・は、恥ずかしい。 こんな女っぽいドレス、やっぱり私には似合わないよ。 早く脱ぎたい。 「菖蒲~もう脱いでも・・・」 「うん、バッチリね。次はヘアとメイク。」 またしても使用人に捕まれ、鏡台の前に強制的に座らされる。 何なんだ、いったい。 されるがままである。
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