城ヶ崎 鎮という男

13/17
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
散々いじくりまわされ、鏡を見ると、そこには目映いばかりの美女が写っていた。 「やっぱり、桃ちゃんは肌が綺麗だから化粧のりがいいわね。」 「これが・・・私?」 鏡をまじまじと見てしまう。 鏡に手を当ててみると、鏡の中の美女も同じ動きをする。 紛れもなく自分のようだ。 「さ、行くわよ。」 「行くって何処に?」 「車の中で話すわ。とりあえず乗って。」 菖蒲に手を引かれ、玄関前に着けてあった車に押し込まれる。 車は菖蒲がいつも送迎用に乗って来るリムジンだ。 中は対面で座れるようになっていて、菖蒲と向い合わせに座らされる。 その間にはちょっとしたテーブルがあり、飲み物の入った冷蔵庫のような物まで備え付けてあった。 「何か飲む?」 「いや、それよりどういう事か説明して。」 「・・・叔父様にね、頼まれたのよ。」 「叔父様って、理事長の事?」 菖蒲の家で何回か会った事があるので、理事長が菖蒲の叔父である事は知っていた。 「そう。桃ちゃんに恋人のふりをして欲しいって。」 「はっ!?何で私が恋人のふりなんか。大体私じゃなくても・・・」 「叔父様たっての希望なのよ。」 それから、菖蒲の口から詳しい経緯を聞いた。 「はぁ、話しは分かったけど・・・」 「やってくれるわよね。」 菖蒲はニッコリ笑って言った。 その笑顔の裏には、有無を言わせぬ圧力があった。 わかってるんだ。 ・・・私が断れないのは。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!