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散々いじくりまわされ、鏡を見ると、そこには目映いばかりの美女が写っていた。
「やっぱり、桃ちゃんは肌が綺麗だから化粧のりがいいわね。」
「これが・・・私?」
鏡をまじまじと見てしまう。
鏡に手を当ててみると、鏡の中の美女も同じ動きをする。
紛れもなく自分のようだ。
「さ、行くわよ。」
「行くって何処に?」
「車の中で話すわ。とりあえず乗って。」
菖蒲に手を引かれ、玄関前に着けてあった車に押し込まれる。
車は菖蒲がいつも送迎用に乗って来るリムジンだ。
中は対面で座れるようになっていて、菖蒲と向い合わせに座らされる。
その間にはちょっとしたテーブルがあり、飲み物の入った冷蔵庫のような物まで備え付けてあった。
「何か飲む?」
「いや、それよりどういう事か説明して。」
「・・・叔父様にね、頼まれたのよ。」
「叔父様って、理事長の事?」
菖蒲の家で何回か会った事があるので、理事長が菖蒲の叔父である事は知っていた。
「そう。桃ちゃんに恋人のふりをして欲しいって。」
「はっ!?何で私が恋人のふりなんか。大体私じゃなくても・・・」
「叔父様たっての希望なのよ。」
それから、菖蒲の口から詳しい経緯を聞いた。
「はぁ、話しは分かったけど・・・」
「やってくれるわよね。」
菖蒲はニッコリ笑って言った。
その笑顔の裏には、有無を言わせぬ圧力があった。
わかってるんだ。
・・・私が断れないのは。
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