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ホテルのロビーに入ると、理事長が待っていた。
「来てくれてありがとう。菖蒲ちゃんから聞いているのだろう。」
「えぇ、まぁ・・・」
「しかし、君はホントに綺麗だねぇ。誰も男だとは思わないよ。」
・・・そうだった。
理事長は私の事を男だと思っていたんだっけ。
そこは愛想笑いで誤魔化す。
「城ヶ崎さん・・・ですよね。わたくし、守下 志津と申します。」
「あぁ、お話しは伺っております。」
どうやら、見合いの相手が着たらしい。
物腰の柔らかい、大人な感じの美女だ。
「・・・あの、そちらの方は?」
「彼女は、私の恋人です。」
理事長は私の肩を抱き寄せ言った。
「秘書が勝手に話を進めてしまったみたいですが、私には彼女が居るので、誠に申し訳ないですがこの話はなかった事にしていただきたい。」
すると、志津さんはフフフと笑った。
「実はわたくしも断ろうと思ってたんです。父が勝手に決めた縁談だったので。」
「そうだったんですか。・・・なんだかあなたとは気が合いそうな気がしますね。」
「わたくしも今そう思ってましたわ。」
見つめ会う二人。
・・・あれ?
これ完全に私邪魔じゃないの?
「あの~、私帰りますね。」
「あぁ、すまないね。頼んで来てもらったのに。」
「いえ、では後はごゆっくり。」
会話を聞いて、志津さんは目を丸くしていた。
「あら?彼女は恋人なのでは?」
「実は・・・体よく縁談を断る為に、恋人の振りを頼んでいたんです。・・・申し訳ない。」
「そうですか。それなら良かった。」
志津さんはニッコリ笑った。
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