城ヶ崎 鎮という男

15/17
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
ホテルのロビーに入ると、理事長が待っていた。 「来てくれてありがとう。菖蒲ちゃんから聞いているのだろう。」 「えぇ、まぁ・・・」 「しかし、君はホントに綺麗だねぇ。誰も男だとは思わないよ。」 ・・・そうだった。 理事長は私の事を男だと思っていたんだっけ。 そこは愛想笑いで誤魔化す。 「城ヶ崎さん・・・ですよね。わたくし、守下 志津と申します。」 「あぁ、お話しは伺っております。」 どうやら、見合いの相手が着たらしい。 物腰の柔らかい、大人な感じの美女だ。 「・・・あの、そちらの方は?」 「彼女は、私の恋人です。」 理事長は私の肩を抱き寄せ言った。 「秘書が勝手に話を進めてしまったみたいですが、私には彼女が居るので、誠に申し訳ないですがこの話はなかった事にしていただきたい。」 すると、志津さんはフフフと笑った。 「実はわたくしも断ろうと思ってたんです。父が勝手に決めた縁談だったので。」 「そうだったんですか。・・・なんだかあなたとは気が合いそうな気がしますね。」 「わたくしも今そう思ってましたわ。」 見つめ会う二人。 ・・・あれ? これ完全に私邪魔じゃないの? 「あの~、私帰りますね。」 「あぁ、すまないね。頼んで来てもらったのに。」 「いえ、では後はごゆっくり。」 会話を聞いて、志津さんは目を丸くしていた。 「あら?彼女は恋人なのでは?」 「実は・・・体よく縁談を断る為に、恋人の振りを頼んでいたんです。・・・申し訳ない。」 「そうですか。それなら良かった。」 志津さんはニッコリ笑った。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!