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ホテルを出ると、まだ迎えは来ていないようだった。
そりゃそうだ。
こんなに早く帰されるとは思っていなかったもんな。
さて、どうするか。
思案していると、誰かがぶつかってきて、私は後ろに倒れた。
「痛た・・・」
ムニュ
?
その人物は、倒れた拍子に私の胸を鷲掴みにしていた。
「わ、わりぃ!わざとじゃないんだ。」
直ぐに手を離し、顔を真っ赤にしているその人物に、私は見覚えがあった。
「尾川・・・誠君?」
しかし、彼は何故か女装をしていた。
ヒラヒラの可愛らしいワンピースに、ウェーブのかかったロングのウィッグが、彼の愛らしい顔にとても良く似合っている。
「えっ?お前、女装コンテストの時の。でも、あれ?今の感触・・・」
彼は私の胸を掴んでいた方の手を見る。
「・・・女?」
「いや、これにはわけがあるんだ・・・」
私がわけを話そうとすると、彼は私の口を塞いで、ホテルの前の茂みに隠れた。
「誠~どこ行った~」
「ちぇっ、せっかく用意したのに。」
ホテルの中から若い女性が二人出てきた。
誠君を探しているようだ。
暫くすると、諦めたのか、中に戻って行った。
誠君は安堵の溜め息を吐き、私から手を離した。
「今のは?」
「俺の姉貴達。」
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