城ヶ崎 鎮という男

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誠は医者をしている父と、元看護士の母との間に、二人の姉を持つ末っ子として産まれた。 可愛らしい顔立ちの為、女の子に間違えられる事が多く、町を歩けばナンパされ、電車に乗れば痴漢にあった。 そのせいもあり、幼い頃から姉達にからかわれ、おもちゃのようにされていたようだ。 姉達への反発もあり、男である事を誇示しようと、少々ひねくれた性格に育ってしまった。 口が悪いのはその為である。 今日は家族で食事に来ていた。 「誠~ちょっとおいで。」 長女の玲がニヤニヤしながら手招きしている。 次女の凛も隣に居る。 こういう時は大抵ろくなことが起きない。 わかってはいるが、逆らえない事もわかっている。 末っ子に産まれた者の性である。 「なんだよ。」 「良いから。こっち、こっち。」 二人の姉に両腕を抱えられ、引きずられるように連れて行かれる。 連れて行かれた先は更衣室のようだ。 このホテルは結婚式等にも使用される為、こういった部屋がいくつか用意されている。 「・・・何をする。」 フフフフフ・・・ 不気味に笑いながら、ジリジリ近付いてくる二人・・・ ・・・その結果、今の出で立ちだ。 隙を見て逃げてきたが、もう少しで下着まで変えられそうになった。 「・・・お前も苦労してるんだな。」 桃花は誠の肩に手を置いて、憐れみの目を向ける。 「そんな目で見るな~」 走り去る、誠。 桃花は誠の背中を無言で見送った。
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