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まずはこれでしょう。
私達は観覧車の乗り場前に来ていた。
黙ったまま下を向いてしまったので、誠君の表情は見えない。
ハッ
観覧車=恋人同士みたいで気まずいかも。
可愛いとはいえ、一応誠君も男の子。
男女が密室で二人きり。
急に恥ずかしくなってきた。
私って奴はなんて考えなしなんだ。
とか考えてるうちに、私達の前に観覧車が停まった。
「足下お気を付け下さい。」
案内されるままに、観覧車に乗り込むと、やはり気まずい空気が流れた。
この現状を打開するために、何とかしなければ・・・。
「あの後大丈夫だった?ほら、ホテルで会った時。お姉さん達から逃げてたじゃ・・・」
あっ!
誠君はまだあれが私だって知らなかった。
自分からばらすなんて・・・今の絶対気付いたよね。
「こいつ女なのに女装してやんの」とか思われてたらどうしよう。
とか考えてたら、急に誠君の両手が私の両膝をガッチリ掴んだ。
!?
驚いて誠君の方を見てみると、相変わらず俯いていて顔はよく見えないが、肩をプルプル震わせている。
私の膝を掴んでいる両手には力が入っている。
また何か怒らせるような事を言ってしまっただろうか。
「・・・だよ」
誠君が何事かを喋った。
しかし声が小さくて聞き取れず、聞き返してしまう私。
「えっ?」
私の問いに今度は自棄っぱちのように、はっきり大きな声で言った。
「高所恐怖症なんだよ!」
怒っていたんじゃなくて、純粋に怖がっていたんだね。
上げた誠君の顔は青ざめていた。
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