変態は変態を呼ぶ?

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部室に入ると、部長の桐生 百合音が、先に来て準備を進めていた。 桐生という名字でピンときた方もいるかもしれないが、百合音は菖蒲のひとつ上の姉である。 私達は家が近所で幼稚園、小中高校と同じ学校に通っており、幼馴染みの腐れ縁というやつだ。 「百合姉ごめん。遅くなった。」 私は百合音の事を百合姉と呼ぶ。 「大丈夫よ。準備は終わったから。今日はいい林檎が手に入ったから、アップルパイにしましょう。」 百合姉はおっとりとした口調で言った。 百合姉と菖蒲はあまり似ていない。 菖蒲が凛とした美人であるのに対して、百合姉はおっとりとした美人である。 柔らかい雰囲気があり、周りを和ませてくれる。 しかし芯はしっかりしていて、生徒会長も任されている。 「あら、菖蒲も来たのね。たまには一緒に作ってみる?」 やんわりと百合姉が言ったのに対して、菖蒲は 「いえ、私は見学だけで結構。」 と突っぱねた。 菖蒲に言わせれば、 「余計な労力は使いたくない。」 だそうだ。 趣味?には全力なのに。 「それより、百合音。スカートのファスナーが開いてるわよ。」 「あら、大変。」 百合姉は他人事のように言い、いつものようにファスナーを閉めた。 そう、いつものように。 百合姉は少し抜けている所がある。 ファスナーが開いている事など、日常茶飯事だ。 「そうそう、今日は新入部員が居るのよ。」 新入部員? 今は6月だ。 仮入部も終わったこの時期に、新入部員とは珍しい。 「ついさっき、入部届けを持ってきたんだけど、顧問の先生に提出してきてねって言ったの。そろそろ戻って来るんじゃないかしら。」 と、その時、誰かが勢いよく部室の戸を開け入って来た。 それを見て、百合姉が一言。 「彼女よ。」 その人物は、私を見付けると駆け寄ってきた。 「五十嵐先輩、私諦めないって言いましたよね。先輩を追いかけて、製菓部に入っちゃいました。」 あれ? さっきの子だ。 確か名前は・・・ 「今野 愛美です。私のこと好きになるまで離れませんから。」 ・・・また厄介なのが増えた。
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