Silent Night

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気がつくと、俺は病院のベッドの上だった。 体のあちらこちらが痛むが、幸い骨に異常はないようだ。 軽い脳震盪を起こしていたので、一応一通りの検査はしたが異常なし。 不幸中の幸いか。やはり俺は不幸だ。 最悪のクリスマス。病院でのSilent Night。俺は自虐気味に笑うと 「何ヘラヘラしてんのよ。」 と、俺の今、一番聞きたい声がした。幻?俺の顔を覗きこんで、黒髪が鼻をくすぐった。 「リサ?」 俺は体を起こそうとしたが、打撲の体は容易には起きることができない。 「まったく。ボケっと歩いてるからよ。」 リサが俺の髪の毛を撫でた。 俺は照れくさくて 「せ、先輩と一緒じゃないのか?」 とつい口から出てしまった。 「何でそこで先輩が出てくるのよ。」 「だって、付き合ってるんだろ?」 「あれは、あちらが言いふらしてるだけよ。」 「じゃあ、付き合ってないの?何で否定しない?」 「面倒くさいから。付き合ってることにしてれば、変なのが言い寄ってこないし。M先輩強いし。」 「でも、キーホルダー、先輩からもらったんだろ?」 「ああ、あれ?かわいいからつけてるだけ。頭は悪いけど、贈り物のセンスはいいわね。」 「先輩は、平気なの?」 「先輩にも事情があるのよ。私と付き合ってることにすれば、彼の性癖も隠せるでしょう?」 えっ。何それ? 「タクヤだけに教えるけど、言わないでね。」 リサの口から、先輩の本命の彼の名前を告げられた。 俺はずっと知らずに、遠慮していた。 「なあ、リサ。」 俺が声を発すると同時に、リサが語り始める。 「タクヤは、覚えてる?小さい頃の約束。」 俺の心臓がドキリと鳴った。 今俺も、おんなじことを言おうとしていた。 「覚えてるよ。ケッコンの約束だろ?」 俺はリサに微笑みかけた。 リサも微笑み返してきた。 「そうだよ。私から、ケッコンしてくれる?ってお願いしたの。」 「うん、俺はいいよって答えた。」 「ケッコンの意味も知らずにね。」 リサがクスクスと笑う。 ほんとうに可愛い、リサ。 「俺、本気で、お前のこと。」 「愛してる?」 リサが俺をまっすぐに見つめた。 俺はもう素直に口にしていいんだ。 「ああ。愛してる。」 「命がけで?」 リサがニヤリと笑った。 「あ?ああ。」
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