天秤

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空君は箸を置き、真っ直ぐに下を向いて切なげに眉を寄せる。 そして浅い溜息を吐いた。 「里香ちゃんがもっと薄情な人だったら、もっと簡単に話せていたのかもしれないな」 私には聞こえるか聞こえないくらいかの小さな声でそう呟いたのがわかった。 でも、それには聞こえないふりをした。 だって、私は薄情な人間だと思ったから。 空君が今言った言葉で、別れ際に慎也から言われた辛いシーンを思い出した。 私は自分勝手な人間で、えっちゃんみたいに彼氏に笑顔を向けて癒してあげれる性格とは程遠い。 それにもっと情に深い女なら、自分の性格のせいで浮気をした慎也にすがってでも謝罪をして、関係を修復しようとしたんじゃないのか? って思う。 それが出来ない私は、やっぱり自分本位な人間なんだ。
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