”一之瀬 空”という人

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食事に誘われて青いスーツの彼が連れて来てくれたお店は、この辺りじゃ老舗として有名で格式高い懐石料理のお店だった。 着物姿の女性に出迎えられ、庭師による完璧に手入れされた中庭を横目に個室に案内されて完全に委縮してしまった私。 仲居さんが退出した後も、首も目もきょろきょろとさせながら厚みのある座布団に正座をした。 「ごめん。接待や打ち合わせ以外であまり外食はしないから、こんなところしか知らないんだ。緊張してる?」 「ま、まぁ……私の会社ではこんなところにはまず来ないから。あなた、いったいどういった会社で働いているの?」 「ははっ。自分の取引先の人間の会社くらい覚えておいてね。でも、そうだね。名刺を渡した方が早いかな」
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