救いの手

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「あぁ……今の私、世界で一番不幸だわ……」 そんな悲劇のヒロインを演じている私。 江藤 里香 二十五歳。 昨夜、突然親友に彼氏を寝取られ、彼氏と親友という人生で不可欠な存在を同時に失ってしまったという悲劇にあった、文房具メーカーの一般事務員の女。 二人して去ってしまったという事から分かるように、元カレにとっていつの間にか本命の私が浮気相手となり、そして元親友が本命という立場に逆転していた。 そして、それに数か月も気づいてなかったおめでたい女だ。 多分、二人が親密になったのはいくら長く見積もっても三か月。 なぜ三か月かというと、私が元カレ慎也に親友のえっちゃんを紹介したのがちょうど三か月前だから。 あの時は二人とも距離感はあったし、えっちゃんも「いい人だね」なんて無難なほめ言葉を言ってくれていたのに…… 「はぁぁ……なんでこんな事に」 会社の貴重な昼休みに、オフィスが入っている十階建てのビルの屋上で一人黄昏ながらフェンス越しに空を眺めていた。
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