救いの手

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「はぁ……いくら思い出しても、なーんも特別な事がない人生だなぁ」 フェンスを指で握り、今までの人生を思い出す。 特に不幸もなく、だからといって特別な幸せもない至って平凡な私の二十五年間。 普通レベルの学校と普通レベルの大学を卒業し、大手ではないけれど小規模でもないこの会社で働き始め、適度に人間関係に揉まれて処世術を勉強し今に至る。 考えれば、昨日の出来事が私の中で一番の大きな大事件だったのだろう。 今までのらりくらりと過ごしてきた私にとって、昨日の出来事はぬるま湯につかってきた私のメンタルに、大きくて深い傷を残してくれたみたいだ。 だからといって今すぐに”死”を望むような、そんな勇気のある女ではない。 そんなことに使うくらいなら、違う出会いを求めるための勇気に使う。 それくらいの判断がまだ出来る内は、本当に傷はついていないのかもしれないけれど。
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