救いの手

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それを確証してくれるのは、昨夜の慎也の言葉だった。 『里香、俺がいなくても生きていけるくらい強い性格してるだろ? それに思い込みも激しくて感情の起伏もさらに激しい。それに疲れたんだよ』 散らばった衣服を着ながら淡々と語った慎也。その姿は冷静に見れば何とも情けない姿だ。 でも、その時の私にとっては生々しい二人の行動に昂る感情が抑えきれなかった。 『じゃあハッキリとそう私に言ってくれればいいじゃん!』 『言ったらお前、改心したのかよ。売り言葉に買い言葉でどうせ喧嘩になるの目に見えてるだろ? 俺はもうそういう事に気疲れしたんだよ。笑美みたいに癒してくれる子にそばにいてほしいんだ』 ”笑美”っと慎也が呼んだ名前に肩がピクリと動いた。 いつの間に”笑美”なんて呼ぶようになったんだろう。私の前では”えっちゃん”って呼んでいたのに。
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