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その言葉だけ吐くと、慎也はずっと俯いていたえっちゃんを庇う様に彼女の前に立っていた。
まるで私という敵から彼女を守る様に。
そして私は二人の前から走り去ったんだ。
「_____はぁぁぁぁ。本当、不幸……」
大きく溜息を真っ青な空に向けて吐くけれど、それはあっという間にその青色に溶けていく。
何だかもうどうでもよくなってこのまま大声で何かを叫んでやろうと思い立った時だった。
「ははっ。凄い溜息」
私の気持ちとは反対の軽快な笑い声が屋上の出入り口の扉から聞こえてきた。
驚き振り返ると、声がした場所からは人の気配は感じられない。
「えっ? 何? 今、声が……」
決していい声とは言い難いかすれた高い声だったけれど、少年にはない低い音も持ち合わせている声だ。
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