天秤

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「ごめん、変な話をしたね。もう俺の話はやめよう」 返答に困っている私に気付いた空君は自らこの話を切り上げた。 そして「テレビでも見よっか」なんて言わせてしまう辺り、私って人間は本当に器が小さいし、何でもかんでも感情が表情に出過ぎだ。 ここが慎也にも嫌われた原因だっていうのに。 何も成長していない自分の太ももをつねり、小さく首を左右に振った。 「ごめん、変な態度を取って。もうしない、絶対。だからもっと話して、空君のこと。もっと聞きたい」 空君のリモコンに伸ばしていた手が止まった。 そして目を私と真っ直ぐに合わせる。 「……全く面白くない話ばっかりだよ?」 「そんなの、空君が決めることじゃない。私が聞きたいの。全部聞きたい。会えなかった間、空君に何があったのか。知りたいって思っちゃダメ?」
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