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コツ、コツ
小さな足音が響く洞穴。人口のものだろうか。奥に階段まで見える。足下には淡く光る草花が点々としていた。
足音の主が階段を下りていくと、岩の削れる音がする。硬いものにぶつかり弾かれているのだろう。足を早める。
下まで行くと、一人の大柄な男を見つける。ここで指揮をしているらしい男に話しかけた。
「手伝いに来ましたよ。お迎えが来るまでの少ない時間ですがね」
坑道はしっかりと灯りを置いているらしく、足元以外。服装や顔まで見ることが出来た。
茶色いロングコートに隠れているのは外見年齢10代程の少女。目が見えないのか、うっすらと開かれた瞳は光を失っている。髪が銀色という事以外、パッと見は普通の女の子なのだろう。
こんな所に普通の人間がいるとは思えないが。
「手伝ってくれるのはありがたいが、保護者無しに出歩くなと言わなかったか?」
大柄な男が、でかい声で言った。少女がうるさいとため息をついた。
「数分の事だ、問題無い。周りにおかしな事をしでかす輩はいない。鉄の場所を教えるだけならそんなに時間もかからない」
「そりゃ、お前ならそうなんだろうが……はぁ。場所教えてくれるか」
「ちゃんと覚えろよ」
まず……。一週間で届くだろう範囲の鉱石の情報をすべて大柄な男に話す。この道を通れば早いだとか、あの道は悪いだとか。
「そうだ、あっちの止めさせた方がいいよ。ツルハシが壊れる」
数時間一切進めない男達を指さす。石を壊そうとツルハシを振り下ろし、弾かれた反動で後ずさりしている3人組がいた。
「何時間あのままなんだ」
「まだ3時間くらいじゃない?そこまでずっと見ていた訳では無いけど、恐らくそれくらいよ」
「そうか、一時間以上動かなければ遠回りしろと言っていたはずなんだが」
「そんなことしてたら穴だらけになるわ。補強しなさいよ。最近上がうるさくなってきているから落ちてくるかも」
「うむ、考えておこう」
大柄な男は手元にあった資料に何かを付け加える。
「もういい?お迎えが来たみたい」
少女が嬉しそうに笑う。
「お前ら兄妹は仲いいな。幸せなこって」
「幸せかどうかは知らないけど、頼れるところが少ないんだもの。仲がいいのは当たり前よ」
「それもそうだ」
「じゃあ、またしばらくしたら来るわ」
「おぉ、今日はありがとな」
大柄な男を置き、少女は来た階段を戻っていく。
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