ショバ代の現代事情

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【本編】 深夜3時、 四回戦の店主の木村は 店の看板を店内に仕舞っていた。 木村は元プロボクサーで、 好きなスター選手のポスターを店の壁に貼ったり、 店のテレビでボクシングの試合を、 DVDプレーヤーを使って流していた。 10坪の店内は、従業員はおらず、 木村が一人で店を切り盛りしていた。 木村  「この辺は、深夜は誰も歩いていない」     「深夜営業は無駄だな」 そして、《閉店》の札を入り口のドアに掲げた。 彼は四回戦を開店する前に、 物件を取得する際、 権利を売り渡す側の前の店主「宮崎」に、 虚言的な オイシイことを言われた場面を思い出していた。 回想シーン。 廃業の店内で、 木村と宮崎と仲介不動産の油井が三人で会話。 (居抜き物件のため、店内は普通の風景です) まずは挨拶をする三人。 宮崎  「はじめまして、私がオーナーです」 油井  「こちらが、内覧希望者の木村さんです」 木村  「この物件、綺麗ですよね」 と、嬉しそう。 宮崎  「内装で900万かかってますから。      まだ1年経っていませんし」     「この近くには      キャバクラが深夜まで営業しているし、      朝方まで人通りは多いですよ」 油井  「居抜きですから、このまま使えますし」     「是非、この物件はお勧めですよ」 回想終了。 木村  「ダマされた」 と、苦虫を噛み潰した表情。     「知り合いの不動産屋に聞いたら、      内装はせいぜい400万だっていうし、      おまけにこの辺の飲食店は、      どこも閑古鳥が鳴いている」     「契約する前に      リサーチしておくべきだった……」     「商店街は、駅の反対側だし」
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