一章 逃亡。

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▽ エース達と別れてからどれくらいが経っただろうか。本隊はアーダントの後方部隊と合流に成功した。今はラットが向こうの上官と話をつけているところだ。 向こうとしては序列一位と二位がいないことに腹を立てているらしいがラットがどうにか収めそうだ。今回の戦争なんざ序列三位の俺がいれば十分だろう。慢心は良くないことだが事実なのだから仕方ない。 「ではそういうことで……。よし、フランクいくぞ」 話を終えたようでラットがすれ違いざまに声をかけてきた。 「はいよ。じゃあもう行くのか?」 「ああ、作戦通りな。ぐふふふ」 相変わらず気味の悪い顔してるなこいつ。すでに荷車はまとめて森の中に隠してきている。あとは戦闘に加わって裏切るだけだ。 ラットの後に続くようにして俺も自分の部隊の元へ向かった。今回デトラからの参加人数は総勢九十六人。報酬が良い依頼だった分かなり多い。エース達を除いて本隊の人数は八十四人。一つの部隊につき十人程度となっている。 その一つ一つを序列入りしているやつらが率いて戦う。デトラが戦争で雇われるときはいつもこのやり方だ。 というわけで序列三位の俺が率いる部隊には優秀な人材が多い。エースとフィナがいないから俺の部隊が本隊の切り札ってところだな。 メンバーを率いて他の部隊より少し前に出る。振り返ると全部隊が綺麗に整列していた。壮観だ。 「お前ら! さっさと終わらせて宴といこうぜ! 報酬に見合った働きをしてくれよ!」 野太い声が響き渡り、その場が熱気を帯びる。戦争においての士気の重要性は言うまでもない。 「いくぞ!」 俺の掛け声を皮切りに部隊全体が戦線に駆け出した。すでにいくつもの死体が転がっている。まさに戦場って感じがして良い具合に緊張感があるな。 ラットによると最初はアーダント側としてしばらく戦って良いらしい。ファント側も多少の犠牲には目を瞑るとのことだ。
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