一章 逃亡。

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俺自身、戦闘狂って呼ばれるような性格じゃないが身体を動かすのはすごく好きなんだ。もちろん見返りは必要だがな。 ファント側のギルドには申し訳ないが殺らなきゃ殺られる、仕方ない。 すでに戦闘している小隊を見つけるとそこに炎の魔法を放つ。突然の襲撃に彼らは状況をまだ把握できていない。 「らぁ!」 使い慣れた細身の刀身の剣を引き抜き、それを振るう。一人、また一人と倒れていく。 「デトラだ! デトラの連中だぞ!」 驚愕した表情を浮かべ俺達のギルドの名前を叫ぶ。状況を理解した周囲のギルド員たちが少しずつ後退していく。 ここまでは想定通り。裏切るのはアーダント側が油断したところだ。 他の部隊も順調に敵の部隊を撤退させて行く。殺し過ぎてはダメだ。逆転が難しくなる。しかし、向こうも向こうでなかなか引いていかない奴も多い。 名声を上げるために各ギルドの序列上位のメンバーを倒しに行くなんてことは良くあることだ。 今回も例に漏れず勝負を挑んでいる奴らがいるようだ。 「俺のところもか……」 目の前に剣を構えたギルド員が一人。デトラの序列三位に勝ったともなればただ事じゃないからな。狙いたい気持ちは分かるが。 「さすがに相手が悪かったな」 風属性の魔法で加速する。普通のギルド員だと目で追うのが精一杯というところだろう。剣の刃は相手の首を胴体と切り離した。 これから来ようとしていたやつも今のを見れば少しは引き下がるだろう。 全体を見渡すと十分押し返してきている。俺以外の部隊も順調のようだ。後はラットがどのタイミングで指示を出すか。 ちらりと視線を腰に落とす。戦闘前に渡されたクリスタルはまだ反応しない。 しかしこの状況で裏切るとなるとまるでデトラだけで戦争しているみたいで少し笑えるな。とんだ茶番だ。 「あん?」 目の端に人影。次の瞬間ソードの刃が目に飛び込んでくる。
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