一章 逃亡。

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冷静に対処して剣で受け止める。襲いかかってきたそいつを確認すると、見覚えのある顔だった。 「なんだ、シャドウじゃねぇか。お前も良く飽きないな」 ギルド【ファントム】の序列一位。強い奴と戦いたいとか言ってあちこちのギルド員相手に決闘を申し込んでいるらしい。 最近はいよいようちの四位を倒したとかって聞いたな。つまり次は俺ってことで。 こうやって会う度に襲いかかってくる。物騒なやつだ。適当に相手してやるか。 「今日こそは勝つ!」 連撃、連撃。こいつはとにかく手数が多い。そのすべてを剣で弾き、避ける。速さはあるんだが如何せんパワーと戦略がいまいちだ。 要は短調なのだ。もう少し頭を使うべきだな。せめてフェイントくらいは入れたらどうなんだ……。そういう戦い方は嫌いじゃないけどな。 横目で戦況を確認すると、すでにアーダント側の圧勝ムード。 部隊はファントの拠点近くまで押し込んでいる。ラットの指示はまだだろうか。 そんなことを考えながら、シャドウの攻撃を受け流す。ひたすら真正面から打ち合いをしてくるシャドーだったが顔面を狙った突きを俺が躱したところで一旦距離をとった。 「はぁはぁ、貴様! なぜ反撃をしてこない! 私を舐めているのか!」 「ああん? お前こそもうちょっと強くなってから来たらどうだ? 前やった時と変わってねぇぞ」 俺の挑発に対してシャドウが苦虫を噛み潰したような顔になる。 ここで腰のクリスタルに変化が。確認のため目を向けるとさっきまで青かったクリスタルは赤く変色していた。 「おっと時間切れだ。今から味方だからよろしくな」 「は? 貴様何を言って……」 シャドウがなにか言いかけていたがファントの拠点の近くで爆発音がした。向こうではすでにアーダント側と戦闘を開始していた。 「まさか貴様ら、裏切ったのか」 シャドーが凄まじく怒気を含んだ顔で俺を睨みつけてくる。シャドウらしいな。
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