一章 逃亡。

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口から血を吐き、全体重を俺にかけてくる。剣を引き抜くと、支えを失った死体は地面に倒れた。 「部隊長は死んだ。お前たちはまだやるのか?」 死体から目を残った部隊に戻そうとしたとき、すでに敵の部隊の一人が俺の目の前で剣を振りかぶっているところだった。 「エース!」 フィナが俺の名前を叫ぶ。すぐさま剣を構え、相手の上段からの攻撃を横に受け流す。どうやら諦めるつもりはないらしい。 ふと違和感を覚えた。斬りかかってきた隊員は部隊長の死に対してあまりにも冷静だったからだ。 焦った感情、怒りの感情、そういったものが感じられない。 そう、まるで部隊長が死ぬことがわかっていたような。そういった反応。 もちろん俺の勘だ。証拠はない。とにかく対応が先。あとで聞き出せば済む話だ。 「全員俺の後ろまで下がれ!」 相手に降伏の意思がないなら仕方ない。味方にも負傷者が出ている。全員まとめて片付けよう。 俺に斬りかかってきた相手を風魔法で強制的に敵部隊がまとまっている位置まで吹き飛ばす。 味方が全員範囲外にはいったことを確認して、俺は左手に魔力を集中させた。 「フレイムストライク!」 下水道内が一気に明るくなり、高熱を発する炎で埋め尽くされる。敵部隊に向かって炎は迫り瞬く間に敵の部隊は炎に飲まれた。 敵部隊の何人かが水魔法をつかったのが僅かに見えたがどうやら効果はほとんどなかったらしい。 数名の水魔法を使った者を除いて絶命していた。水魔法を使った者でも今は気を失っている。 そのうちの一人を水魔法と雷魔法で無理やり起こした。呻き声を上げ苦しそうにしているがそんなことは気にしていられない。 「おい、お前たちの目的はなんだ?」
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