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「うう……」
一応剣は構えたまま、敵の兵士に向けている状態で目的を聞き出す。しかし意識はあるものの、話すことは難しそうだ。
辺りには人肉の焼けた臭いが漂い、鼻を突く。あまり長居はできないだろう。
一応兵士たちの持ち物を探ると、ファント国の紋章が付いたバッジが出てきた。これで間違いなくこの部隊はファントの軍人だということが確定した。
ファント側の兵士がデトラの裏切りについて知らされていないことはどう考えてもおかしい。ましてやこの下水道内でなにか作戦を決行するなら尚更だ。
伝達ミスは当然考えられるが戦争中のピリピリした状況下でそんな初歩的なミスをするとは考えにくい。
明らかに異常だ。
「エース、急ごう。そんなに時間はないと思う」
「……そうだな」
本来の目的を忘れてはならない。ここでの予想外の戦闘により、下手をするとラットの指示に間に合わない可能性がでてきた。
「いこう」
拭いきれない違和感を抱きつつ、俺達は再び歩き始めようとしたそのとき。
ガラガラと凄まじい音をたて、天井が崩れ始めた。
「フィナ!」
真っ先に崩れたのはフィナの真上の天井。フィナの手を掴んで俺の身体の方に引っ張る。
俺はそのまま全力で風魔法を使い、崩壊から逃れるために全力で加速する。
天井の崩壊はそれほど広い範囲には及ばなかった。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
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