一章 逃亡。

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全員の表情を見るとまだ何も説明されていないらしい。 「これで全員集まったな。では次の仕事の内容を話す」 ソファーに腰を落としたラットに全員の視線が集まる。 「次の仕事は」 ラットが一旦言葉を区切り焦らしてくる。おっさんの焦らしなんて誰も求めてないんだよ。さっさと言え。 「エース、フィナの抹殺だ」 その場にいる全員の動きが一瞬止まる。聞き間違いか? 声を上げるような奴はいなかったが全員が動揺しているのが分かった。 「ついさっきアーダントの依頼主から連絡があってな。俺達が裏切ったことについて追求された。それで今回の責任者は誰なんだと聞かれてな。当然、今回ファントと交渉したエースとフィナに全責任があるだろ? というわけでやつらを抹殺すれば今回のことについてはお咎めなしとのことだ。みんな頼むぞ」 「ラット、何を言って……」 「ん? フランク。どうかしたか? 昨日ファントと交渉したのは誰だった?エースだろ? 俺達は脅されて、今日アーダントを裏切ったんだ。そうだよなぁ?」 ふつふつと怒りがこみ上げる。こいつら保身のためにエースたちを売ったのか。 俺達はギルドだ。金さえ積まれればどこにだって付く。問題は俺達がアーダントの依頼を無視してしまったこと。 依頼の失敗なら報酬を支払わなければそれで済むが、依頼の放棄とあっては依頼主も黙ってはいない。 それも国からの依頼ともなれば尚更だ。 序列一位と二位の奴ならギルドの指揮権を持っていても何も不思議じゃない。 現にデトラでも序列入りしている奴らにはある程度の特権がある。 それを利用しての責任の押し付け。卑怯なやり口だ。
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