一章 逃亡。

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「みんな知っていると思うが、デトラのツートップだ。簡単に倒せる相手じゃない。しかし心配するな。アーダントの騎士団も動いてくれるそうだ。それにフランクもいる。当然、騎士団には協力するようにな」 デトラの序列一位と二位が相手か。エースとフィナとは序列入りしてすぐに手合わせした。当時負けたときはかなりショックだったことを思い出す。 「それとやつらは魔人だ。どれだけ優勢になっても気を抜くな。なにがあるかわからない。なんとしても殺せ。逃せば……」 ラットはその後の言葉を話さなかった。エース達に逃げられた場合今度こそラットは責任を負わなければならなくなるだろう。 国からの依頼を裏切ったんだ。失敗した時にこうなることくらい分かっていたと思うんだがな。 そしてデトラがなくなってしまった場合。ここにいる奴らはともかく序列入りしていないメンバーは路頭に迷うだろう。ま、そんなことは知ったこっちゃない。 「悪いが俺は降りさせてもらうぜ」 「なにぃ!?」 気分が悪い。俺としては是非ともラットに責任を取って貰いたいものだ。デトラがどうなろうが俺にはどうでもいい。 「金は出ないんだろ? だったら俺は参加する意味がねぇ。てめぇが死のうがどうだっていいからな」 ぐふふふ、と気味悪くラットが笑った。不愉快だ。 「何がおかしい?」 「俺もどういう訳か知らないが……。エース、フィナの抹殺はアーダント側からの正式な依頼だ。もちろん金が出る。ファントからの依頼はリスクが大きかったからな、お前達には言っていなかったが失敗したときのために前金を貰っていた。加えてエース、フィナの抹殺依頼にはかなりの額が提示されている。もちろん成功報酬だがな。フランク、お前がここで降りるなら今回の報酬は全てなくなる。それでもいいのか?」
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