一章 逃亡。

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▽ 落盤があってからどれくらい時間が経っただろうか。どうにか指定された待機場所まで辿り着いた。 ラットから渡された魔力結晶にまだ反応は無い。間に合った。 待機場所に指定されていたのは下水道の側面にぼこっと空いた広まった場所だ。おそらく作られた時に作業の道具や部品を置くために作られた場所なのだろう。 本来十二名で待機するはずの場所に二人しかいないためかなりの余裕がある。 「フランク達うまくやってるかな?」 「大丈夫だろ。あいつらなら負けないさ」 ラットから渡されたクリスタルをじっくりみながらフィナに答える。実際今の戦況でフランクがいて負けるということは考えにくい。 「それよりも分断された部隊のことの方が心配だ。あいつら埋もれてないよな?」 「位置から考えると大丈夫だと思うんだけどね。落盤の範囲はそんなに広くなかったし、悲鳴とかも聞こえなかったし」 フィナに言われて気づく。 「そういえばまったく悲鳴がなかったな」 「デトラは強いギルドだからね。当然だよ」 無い胸を張って得意げにフィナが言う。しかし不自然だ。あの時も違和感があったが、なにか嫌な予感がする。 もし下敷きになっていたなら、普通の人間なら叫び声の一つや二つはあげるんじゃないのか? それとも恐怖で声が出なかったのか……。 また胸に引っかかる感じ。杞憂だと良いんだが。 いくら考えてもこの突っ掛りは解決しないだろう。なぜなら確信を得られないからだ。 「エース」 「ああ、いこう」 ついに魔力結晶が赤く変色した。いよいよ突入だ。
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