一章 逃亡。

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下水道の出口は入口と同様に石で固められた円形になっている。外の様子に気を配りながらいよいよ出ようとしたとき。 「エース!」 「わかってる!」 凄まじい轟音と共に大量の炎の波。全方位から押し寄せるそれは下水道内の壁を削りながら、俺達を中心に収束しようとしている。 進路を防ぐように水属性の魔法を発動させるが、急造な上に相手の魔法の威力が高い。 炎と水が接触し、が蒸発する音が周囲に響く。しかし勢いを止め切ることはできず、俺たちの目の前まで迫ってきていた。 「っつ」 今度はフィナが目の前に水の壁を作り、勢いを防ぐ。二度目にも関わらず勢いを失わずに押してくるが、しばらく競り合った後、両方の魔法が同時に消えた。 「フィナ! 助かった!」 「気にしないで」 周囲を警戒する。いくら魔法の構築が甘かったとはいえ、俺の魔法が押し負けるということは相手もかなりの使い手だ。 もしくは複合魔法の類だろうか。 「ほう。今の魔法を防ぎきるか」 人影が見え、下水道の出口から中に入ってくる。始め、逆光で姿がはっきり見えなかったが中に入ってくるにつれて徐々に顕になる。 胸にアーダントの紋章が入ったバッジ――、それもただのバッジではない。通常の紋章に加え描かれた剣の数が一本多い。騎士団の紋章だ。 「エース・スマイスにフィナ・スマイスだな。私はハンズ。ハンズ・クライスだ。君たちに恨みはないがここで死んでもらう」 ハンズ・クライス。アーダント騎士団の騎士団長。もちろん聞いたことのある名前だ。 ハンズはゆっくりと腰に差した剣を鞘から引き抜き、構えた。 「なぜ王都にいるはずの騎士団長様がこんなところにいる?」
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