一章 逃亡。

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さっき戦闘した兵士もファントの軍人だった。ましてや騎士団長が直々にこんな戦闘地域にくるのはおかしい。 加えてなぜ俺達に気づけたんだ? 待ち伏せにしてもタイミングが良すぎる。 「すまないが、質問には答えられない。いざ!」 一瞬でエースの目の前に移動したハンズはエースに斬りかかる。 「フィナ! やるぞ!」 速い。騎士団長とだけあって剣撃の威力、精度、速度、どれをとっても一級品。 風魔法を使いながら様々な角度で攻撃を仕掛けてくる。型が整い、マニュアルに沿った剣術だ。 中でも中段の斬撃が異常なほど速く、精度が高い。すでに躱しきれずに戦闘服に何箇所か傷がついていた。 それでも致命傷にならないように回避しながら少しの隙を見つけては反撃を加える。 魔法を挟みながら俺はハンズを出口付近まで追いやることに成功した。 「暴風の嵐(ストームウィンド)!」 着地の隙を狙ったフィナの放った魔法がハンズを捉えた。呻き声を上げながら、大きく後ろに吹き飛ばされる。 下水道の出口に当たりそうになり、身を捻って躱し、ハンズはなんとかダメージは回避した。 「まさかこれほどまでとは……」 下水道の外まで飛ばされたハンズにエースが追い打ちを掛ける。 「氷の槍(アイスランス)!」 宙に出現した無数の水の塊が凍り、鋭い先端を持つ氷へと変化した。そのままハンズへと一直線に向かっていく。 ハンズに氷の槍が届こうとしたときだった。ハンズの後ろから飛んできた炎の魔法が槍を相殺した。 「団長、ここまでです」
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