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「すまんなエース。悪く思うなよ」
嫌な汗が頬を伝うのが分かる。
さっきの騎士団長に加えてデトラのメンバーとなってはさすがにまずい。
完全に挟まれた。どちらか一方を突破するしかない。
どちらに出たところでまた待ち伏せされていることは明白だが、この状況が続くのはさらに苦しい。
「フィナ、後ろは任せた」
小声でフィナに伝えると、エースは騎士団員に向けて加速する。狭い通路の中での戦闘となると数の有利が取りにくい。
まるで一対一を繰り返すような状況になりはしたものの、さすがに致命傷は与えられずにいた。
掠り傷とはいえ、体力は確実に消耗してきている。
「それ以上はさせん!」
それまで後ろの方で傍観していたハンズが炎の魔法を打ちながら前に出てくる。
「クソッ!」
デトラと騎士団は挟み撃ちをしてしまったがために、現状では大規模な魔法を打ち辛くなってしまっていた。
かといって今追い詰められているのはエース達だ。騎士団とデトラが包囲を解く訳はない。
「エース! 捕まって!」
フィナがエースの鎧に手を触れる。次の瞬間、妙な浮遊感がエースを襲い、身体が光りだす。
ほんの少し地面から浮くと、身体を包む光は一層強さを増し、次の瞬間にはエース達はハンズの目の前から消えた。
「なんだ!?」
ハンズを含めた周囲のほぼ全員が驚きの声をあげる中、フランクだけはエース達を見つける。
「後ろだ!」
一斉に騎士団が後ろを振り返る。すでにエースとフィナは出口に向かって走り出していた。
「追え! B班! 対象が出る、準備しておけよ!」
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