一章 逃亡。

31/36
141人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
街からこの下水道までに道らしい道は存在しない。背の高い雑草が生い茂り、泥に近い足場で歩きにくい。 騎士団は丘を囲うように配置されていた。 その一点を騎士団からの攻撃を牽制しつつ、なんとか切り開いていく。さっきまで戦っていた部隊と比べるとかなり楽だ。 数は多いが使ってくる魔法は魔力が十分込められていないものも多く、なんとなくだが実践慣れしていない者もいるように感じる。 しかしそれでも彼らの役目は十分に果たしていた。 「らぁ!」 「くそっ!」 後方からの斬撃。下水道の部隊が追いついてきた。フランクを筆頭に後方からは騎士団の魔法部隊が援護してくる。 「エース! 捕まって!」 再びフィナが移動魔法を発動する。さすがにこれだけの数にフランク、ハンズを同時に相手するのは厳しい。 フィナの咄嗟の判断は間違っていないだろう。 身体が光りだし、少し宙に浮いたかと思うと次の瞬間にはフランクの目の前から消えていた。 「そう遠くはない! 捜せ!」 副団長が叫ぶと騎士団員は周囲に散らばっていった。しかし俺は一目散に街への最短距離を疾走する。 デトラのメンバーもそれに続く。この状況でエース達が逃げる方向は街しかないと考えていた。 雑草のせいで姿は見失ったが騎士団が残りの可能性を潰してくれているため、今の段階で見失うという心配はないだろう。 雑草をかき分け少しずつ前進する。ようやく終わりが見え、石造りの大通りが姿を現した。 戦争中ではあるものの、街は賑わいを見せている。 今いる位置は街のはずれのため人通りは少ないが、街の中心の市場の方にはかなりの人混みが見えた。 これではエース達を捜すことは困難だ。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!