一章 逃亡。

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悲鳴や怒声が辺りを包む。騎士団の行動とは思えない。街人からは龍族が街を襲っているように見えるだろう。 「おい! いくらなんでもやりすぎだ!」 「やつらの捕獲が最優先だ。貴様達もさっさと魔法を使え」 「なんだとぉ……!」 騎士団の横暴を見て怒りが込み上げてくる。普段から気に食わないと思っていたがこういう現場を直接見ると余計に嫌悪感が湧いてくる。 「おい、やめとけって……」 「っち」 肩に掛けられた手を荒く払って、逃げるようにエース達の方に再び向かう。 龍族の攻撃を見たエース達はすでに屋根から降り、石道を走っていた。 龍族の魔法で少しは足止めできたものの、俺達との距離はすでにかなり離れている。 「一旦回り込んで挟み込むぞ」 すでに騎士団の部隊の一部がエース達と交戦している。挟み撃ちにできれば一本取れるかもしれない。 「左から回り込む。いくぞ」 メンバー全員に聞こえるように指示しをだし、屋根を降りる。 横目で確認するとエース達は広場で龍族と対面している。 視界が取られているため不意打ちにはできないかもしれないが、それでも真正面から行くよりははるかにましだろう。 民家と民家の路地を使い、凄まじいスピードで距離を詰めていく。 そしていよいよエース達の背後に回り込む。 剣を鞘から出し、俺は構えを取った。 ここまでで直接攻撃のタイミングが少なかったが、今回は間違いなくエース達に何らかのダメージを与えられるはずだ。 ギルドメンバーでも俺のこの魔法を知っているものは本当に極少数。
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