二章 追撃。

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「お前が情報提供者か。詳しく話を聞かせてもらおう」 身を少しだけ前に乗り出して男に声を掛ける。縮こまらせている身体が背中を丸めたことでさらに小さくなる。 それから男は細々と話し始める。 あの日フォートに商売で荷物を運ぼうとしていたこと、そしてそのときにエースと思われる人間にあったということ、脅されエリシアに運びこんだこと。 まとめるとこんなところだった。この男が話していることは明らかに正しい。 エース達の容姿、人数、状態。話す情報すべてがピタリと一致していた。 すぐにエルバートに指示を出す。すぐにでも動き出して損はない。 ただ気になることが1つあった。 「おい、だがちょっと待て。それだと関所はどうやって抜けたんだ?」 「それが、オイラは何もしていないんです。そのまま関所を通れって言われたからそうしただけで……」 「荷台に乗せていたんだろう? 荷物の検査をどうやって通過した?」 「検査員はいつもより長めに荷台を調べていましたけど、何も言われず通されました」 あの日は検閲を厳しく行うよう通達されていた。にも関わらず検査に引っ駆らないということは通常であればありえない。 あの二人のことだ。まだなにか隠していても不思議ではない。 顎に手を当てながら考えるが答えはでない。諦めて顔をあげる。 「知っていることはそれで全てか?」 「は、はい、こんなもんです……」 「協力、感謝する」 椅子から立ち上がりすぐさま次の行動に移ろうとしたが目の前の男に引き止められた。 「あのぅ……賞金の方は……?」 恐る恐るといった表情だが、目の中は強欲に染まっていた。汚らしい目だ。気に食わないが私情を挟む場面ではない。
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