二章 追撃。

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中に入ると両脇にはまとめられた書類が大量に詰め込まれた大きな棚がある。その中央を歩き、入口の真正面にある受付に要件を告げた。 「アーダント騎士団団長、ハンズ・クライスだ。フランク・ノーランはいるか?」 「……フランク・ノーランはギルドマスター室にいます」 異常に聞き取りにくい声量で受付に座っているフードをかぶった少女が返答した。最初こそ戸惑ったがもう慣れたものだ。しかし今日は一層聞き取りづらいな。 受付に向かって右側に扉があり、それがギルドマスターの部屋となっている。木製の床に軍靴の踵がコツコツと音を立てた。 ノックなしに扉を開け中に入る。飛び込んできたのはラットの呆けた表情とフランクからのきつい視線だった。 「これはこれはハンズ様。今日はどういったご要件でしょう?」 突然の騎士団長の来訪にラットがお手本のような媚びを売ってくる。 「今日はフランク個人への依頼で来た。ラット、お前は出ていてくれ」 「か、かしこまりました」 少し嫌そうな表情をした後にラットはそそくさと部屋を出ていく。 扉が閉まり完全にラットの姿が見えなくなったのを確認し、私はフランクの正面に腰を下ろした。 ソファーの背もたれに片腕をかけ、こちらを睨みつけてくる。どうやら機嫌が悪いらしい。 「なんのようだ」 意外なことにフランクから口を開いた。早く帰ってくれということを暗に行っているのだろうか。 「まぁそう睨むな。例の魔人達の居場所が分かったぞ」 「……そうかよ。で? 俺になんの用だ」 エース達のことを聞いてもっと驚くかと思ったが意外と反応が薄いな。それともそういう振りをしているだけなのか。
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