二章 追撃。

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少しだけ冷やかしてやろうかと思ったがやめだ。本当に機嫌が悪いらしい。手短に済まそう。 「魔人が逃げたのはエリシアだ。 騎士団も調査はするが如何せん動きにくくてな。お前に捜索依頼を出したい」 真剣な表情を作り、手を股の間で組んで若干身体を乗り出す。 少しの間フランクは天井を見上げて何かを考えているようだったが、すぐに閉じていた目を開け、こちらに向き直った。 「依頼は受けても良い。だが条件がある」 「なんだ?」 「今回の件、最初から仕組まれていたんだろう? お前はどこまで知っている?」 「……なんのことだ」 「とぼけるのはやめろ。ラットの言動、下水道の状況、あんなものを見れば誰だって分かる。 まぁあんたに聞くよりもラットから聞き出すのが一番なんだがな。ついさっきもはぐらかされたところだ」 フランクの目つきが厳しくなりこちらを睨む目には一層力が入っていた。作戦の内容を話す訳にはいかない。 「お前がそれを知って、どうするんだ?」 しかしこいつそんなことを気にしているのか。一方的に睨まれていたが今度は目に力をいれ、こちらから睨み返す。 「ああ?」 「知ったところでお前の行動は変わるのか? すでにお前は一度あの魔人達を斬ったんだぞ? 今更過去の仲間に同情でもしたか。 仮に作戦の内容がお前の気に入らないものだったとして、お前はどうするんだ」 「なっ……お、俺は!」 「それにアーダントから特別に出した報酬をお前、もう受け取っているだろ。まさか単なる報酬だとは思っていないだろうな? 意味を良く考えろ」 フォートでの戦闘の後にデトラには特別に報酬を出した。つまりはそういうことだ。
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