二章 追撃。

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国が秘密裏に進めていた統合計画はご破産。統合の責任者であったアーダント国王アレス様の尽力によって、世間に知られることはなかったが、一度深くできた溝を埋めることは不可能だった。 結果、国がとったのは保護という名の施設での隔離。そして戦力としての利用。もともと魔人は人数が少ない。ある者は寿命を全うし、ある者は反発して人間に殺され、またある者は姿を消した。 数年で数は激減、今も生きているのは本当にごく少数だろう。もしかするともう私達が最後の生き残りなのかもしれない。当時幼かった私達に自らの意思で選択する権利はなく、デトラで依頼をこなしながら静かに暮らしていた。 あるとき、私たちはかなり長い期間の任務を受ける。その任務中に私達の親が流行りの病で死んだ。そのとき施設にはもう他の魔人は残っていなかった。とうとう二人になった私たちを国は人間社会に放りだした。たった二人の魔人であれば大きな問題にはならないと判断したのだろう。 予算がもったいないだとか、気味が悪いだとか、理由はいろいろあったらしい。行くあてなどあるはずもなく、残された道はデトラで引き続きお金を稼ぐ以外になかった。 様々な思惑が国の役人達の間であるのだろう。今回私達が殺されそうになったのは魔人を生かしているだけで不愉快に思う人間がいよいよ我慢できなくなったということだろうか。 「これからどうするー?」 なるべく何時も通り。心がけて口を開いてみたが声色に不安が混じっているように感じる。 「そうだな……このまま逃げ続けても良いんだが騎士団まで出てきたからな。たぶん俺達を殺すまで諦めないだろう」 ソファーに腰掛け、曲げていた膝を伸ばしエースが立ち上がる。 「俺たちが生き延びるためにはもう依頼主を潰すしかない」 逃げ続けることができないのなら元を断つ。シンプルな判断だ。だがすごく難しく、危険な賭けでもある。
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