二章 追撃。

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いくら私たちでも一国を相手に戦うことは難しいだろう。実際、強力な戦力が集結していたとことと、全力ではなかったことを差し引いても、騎士団の一部を相手にしただけでもこの有様だ。 依頼の規模から考えても相当な権力者が依頼主だろう。私達の2人だけではまず不可能だ。 「何か作戦でもあるの?」 「龍族と交渉しよう。うまく行く保証はないがやってみる価値はあると思う」 「龍族?」 突拍子のないエースの言葉に思わず首を傾げる。 「騎士団が連れていた龍族達、たぶんだけど魔法で操られていた」 戦場に龍族が現れたことに疑問は感じていたが、てっきり人間達と交渉でもしたのかと思っていた。一般に認知されている中で、魔物の中でも唯一知能を持つ種族が龍族だ。 プライドが高く人間を嫌っていることで有名だが、危害を加えない限り基本的に襲って来ることはない。人間が度々手を出しては返り討ちにされている。ただ過去に人間に手を貸した前例が一つだけあるのだ。詳しいことは分かっていない。 大勢の人間がその光景を見ていたにも関わらず、なぜ人間に手を貸したのかという部分については謎のままなのだ。今回も特殊な何かがあったのかと思ったがエース曰く、そうではなさそうだ。 「はっきりとは見えなかったけど頭部に魔法がかけられていたんだ。たぶん誰かの固有魔法(ユニークスキル)だ」 魔人の中でもエースは特殊な存在だ。魔力を見る固有魔法を持っている。通常、魔力は少量では視認することが不可能だ。 一定以上の大量の魔力が一度に放出されることで初めて見ることができる。噂によると人間達の間でもときどき産まれてくるらしく、デトラでも噂で何度か聞いたことがあった。 「こっちから交渉しに行こう。フィナ、正確な位置は覚えているか?」 小さいころに一度だけ、おじいちゃんに連れて行ってもらったときのことを思い出す。
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