二章 追撃。

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王都グランザードの城壁からはるか西にある深い渓谷。数多く存在する龍族の中でも希少な空を飛ぶ龍族、加えて特徴的な赤い体は今でも鮮明に覚えている。 「たぶん大丈夫だと思うけど……でもアーダントに戻るのは危険じゃない?」 「ああ……たしかに危険だ。でも今のところ他の方法が思いつかないし、当分は龍族との交渉を目標にして行動しよう」 アーダントを相手するのであれば助力は不可欠。なんの目的も無しにただ逃げるよりは良いだろう。他に良い案もない。私はエースの提案に乗ることにした。 「とにかくしばらくはお金が必要だ。依頼主を突き止めるためにも生活するためにもな。……といっても普通に働くのは無理だから、ちょっと嫌な感じになるかもな」 私の表情を見て察したのかエースが今後の予定について話しだした。すでに手配書が出回っているという推測から、普通に外にでて働くということはできない。 さすがにまだエリシア全体に伝わってはいないだろうが、よそ者が急に現れたとなれば怪しまれてしまう。ここに長い期間滞在するのも危険だろう。 「まぁ、こころあたりがないわけでもない」 少し訝しげな表情をエースが浮かべる。 「“グルード”って覚えてるか?」 グルード。はっきり覚えている。半年くらい前にデトラにきた依頼で私達が担当した。エリシアのある人物を殺して欲しい、そんな依頼だった。 当時エリシアで新たに作られようとしていたギルドがグルードだ。新しいギルドができると既存のギルドの仕事が減ってしまう。そういった心理からこの手の依頼は多く、そのときもあっさり終わったことを思い出した。 「実は結局作られたらしいんだ。ボスは俺達が殺したけど、代わりにボスになったやつが周りを懐柔したらしい」
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