二章 追撃。

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全く知らなかった。新しいギルドができるのは珍しいことだ。少しくらいニュースになっても良いはずなのに不思議だ。それとも私が無関心すぎるだけなのか。 「知らなくても無理はないさ。俺だってつい最近知ったんだ」 「それでグルードをどうするの?」 「つい最近できたギルドで認知度は低い上に、もし襲撃や強盗なんかがあっても他のギルドの仕業に見せやすい。 民家を狙ってエリシアの騎士団が動いても面倒だ。それに民家よりもお金は集まってはいるだろうからな。 少しだけ資金を分けてもらおう」 至って真面目な表情でエースが言う。 「……あんまり気が進まないね」 「この際仕方ないさ。もしかしたら殺さないといけないことにもなるかもしれないけどな」 寂しそうな悲しそうな声でエースは呟くと、部屋の隅に置いてあった焦げ茶色のローブをこっちに放り投げてきた。 「とりあえずすぐに要る物を買っておこう。今はまだいいけどそのうち本当に行動しづらくなる」 そういうとさっさと外に出て行ってしまう。もう少し心配してくれてもいいのに。エースにばれないようにため息を吐いて私も立ち上がった。身体の調子も問題はなさそうだ。 魔力切れで意識を失っていただけだから当然といえば当然か。強いて言うなら少し気だるいくらいだ。 ぼろぼろの押戸を開けて、周囲の確認を忘れずに外に出る。時刻はちょうど日が暮れたぐらいだろうか。どうやら街外れにある廃墟街らしい。この建物に劣らず、周囲の建物もほとんどが廃墟のようで、ぼろぼろの壁に割れて床に散らばっているガラスが見える。 外には、こういった廃墟街特有の雰囲気になじんだ人間たちがちらほらと出歩いていた。興味深そうな視線が刺さるが、向こうも手を出すような真似はしない。 スラムの日常だ。落ちた人間が日々入ってくる。彼らにとっては見飽きた光景だろう。 「一応注意しとけよ。来た直後は結構大変だったんだからな」 どうやらエースのおかげで彼らにとっての品定めはすでに終わっているようだ。どちらかといえば警戒されているということになる。 「はいはい、感謝してるよ」
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