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ローブで顔が見えないようにしながらエースに適当に返す。少し不機嫌な表情になった気がした。クスッと少し笑うと、今度はあからさまに口を尖らせてこっちを睨みつけてくる。可愛いなぁもう。
「ほら、早くいこ?」
「……わかったよ」
並ぶ廃墟を抜け、スラムの中でも比較的人間が集まる場所に出た。どの国のスラムでも裏市場と呼ばれる場所がある。この手の市場はこの時間帯からが稼ぎ時だ。
歩きながら見渡すと、奴隷、薬物、武器、いろいろと売られていた。どんな国に行ってもよく売られているような品揃えだ。あたりは異様な雰囲気に包まれており、上流区画に住むものが足を踏み入れようものなら、すぐに餌食になるだろう。
その中でも比較的日用品が売られている一角で私達は立ち止まる。日用品といっても色々と訳ありの商品ばかりで、格安のものから異常に値段の高いものまで様々だ。
「これと、これと……」
エースが品物を選ぶ中、私も必要な物を選んでいく。移動中に必要な保存食や布。あ、おもしろそうだし、これも買っておこう。ただあまり量は買えない。持っているお金にも限度が……。
「そういえばお金どうするの?」
店主に聞こえないようにこっそりと耳打ちで聞いてみる。
「ちゃんと払うさ。あの商人から少し奪っといた」
あの商人の正体が誰なのか分からないがおそらく逃げるときに奪ったのだろう。深く追求はしない。会計を済ませて帰路につく。
道中は行きと同じでまとわりつく視線はまだあった。エースも私も気にすることはなく無事、廃墟まで戻れた。
行動は明日起こすことになり、今私は唯一あるソファーに寝転がっている。エースに使えといったのだが押し切られてしまった。
傷はエースの方が深かったのだからエースが使うべきなのに。
納得できずに、少しふてくされながら私は眠りについた。
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