一章 逃亡。

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俺達二人はすぐにラットの部屋を後にし、自分たちの馬車の荷台で朝食をとった。外に出た時には副マスターの説明も終わっていたようですでに広場は静かになっている。 戦争に向かっているところなので物資は貴重だ。朝食はパンとほんの少しの木の実だけ。 「今日も朝からお熱いねぇ」 ふと後ろから声が届く。まためんどくさいやつが来た。 「フランク、そんなんじゃないって何度も言ってるだろ」 ギルドデトラの序列三位。長い付き合いだが絡みがしつこく、未だにあまり好きになれない。ただ悪いやつではないと思う。黒髪のショートヘアで顔は整っていおり、いかにもモテそうな雰囲気だ。序列が高いこともあり、人望もそこそこ厚い。 「またまた、そんな謙遜しなくていいんだぜ?」 にやにやしながら肘で肩をつついてくる。これももう何度目か。 「フランクはラットから何か指示受けてないの?」 フィナが話を逸らそうと別の話題を振る。しかも俺も結構気になっていたところだ。フィナナイス。 「俺には特になかったぜ。今回の戦闘は白兵戦メインで大規模魔法を使える魔術師が参加しているって情報は今のところないからな。ある程度押したところで寝返るってシンプルな作戦だ」 フランクの話によれば今回別働隊になるのは俺達の部隊のみらしい。まぁ伏兵にそれほど人員を割いても意味がないし当然だ。 「二人は俺らとは別で動くんだってな。ま、死なないようにがんばってくれよ」 すました顔で冗談めかして言う。フランクはこういうやつだ。じゃあなと言ったかと思うと自分の荷車に戻っていった。そろそろ出発の時間だ。 「俺達も戻ろうか」 「りょーかい」 荷車に戻り出発の準備が揃うのを待つ。先頭の荷車が動き出し、デトラの荷車は揃って車輪を回し始めた。
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