一章 逃亡。

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「仕方ない。歩いていこう。時間はまだまだある」 こうして俺達は目的地に向けて歩きはじめる。 下水道には先日雨が降ったのか、多少の水が残っていた。使われなくなったとはいえどうやら完全に封鎖されているという訳ではないようだ。 おかげで湿度がかなり高い。ジメジメとした肌触りが少し不快だ。 先頭をフィナに歩いてもらい、部隊の全員が進行方向を見られるようにする。と言っても最後尾からではかなり見づらいだろう。 魔力量の多いフィナはともかく、他のメンバーがずっと魔法を使い続けるのは難しい。俺も使っても良いが、万が一を考えると部隊長が片手を使えないのは少し問題がある。 「みんなすまないが交代で光源の役割をしてくれないか? 炎か雷の属性を使えるやつは何人いる?」 俺の質問に対して手が上がったのは三人。俺はその三人に光源の役割を頼んだ。 結果として隊列はフィナが先頭、その後ろに俺、数人挟んでもうひとりの光源担当、そして残りのメンバーとなった。 何事もなく進む。腰に下げた剣がぶつかる音がカチャカチャと下水道内に響き渡る。目的地まではまだまだ遠い――。
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