二章 追撃。

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「わかってます。そのときは私が説得してみせます」 そこにさきほどまでの泣き顔はもうなくなっていた。決意に満ちあふれた顔、目標を持った目だった。 「だから……自分勝手なんですけど、もっとお兄ちゃんの話聞かせてください」 優しい笑顔でにっこりとほほ笑むアリアは最初に抱いた暗い印象の少女とは別人に見えた。 そんな彼女を見て、フィナも釣られたかのようにほほ笑む。 そして時間は過ぎていく。裏切られた過去の仲間の話をするのはやはり、少しつらいものがあるが、しかしギルドとはそんなものなのだ。過去を振り返ればギルドのために理不尽な犠牲になったものは少なくない。フランクは仕事をしたまでなのだ。そのことを俺もフィナもわかっていた。 しかし、しかしそれでもやはり二度と信頼関係を築くことは難しい。そもそも信頼関係というほどの仲ではなかったのかもしれないが。 ただそういったしがらみは置いておいて、今ある事実は目の前にいる今の自分と似た境遇の少女が、屈託のない満面の笑みを浮かべている。そのことだけで俺はただ嬉しかったのだ。
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