第1章
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あの日の約束を――私は、どうして忘れていたのだろう。 「紗雪ちゃん、指切りげんまん」 お母さんの、口癖だった。 私に、何かを言い聞かせる時。 怒鳴ったり、諭したりではなく、指切りをよくしたものだった。 ――それくらいしか、母親の記憶はない。 私が、ちいさい頃に、亡くなってしまったからだ。 幼心に、覚えている。 その時のこと。
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