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次の日。
今日ほど学校を休みたいと思った日はないが、実際に休む勇気は瑛子にはなかった。
一日でも日を空けると終わりな気がしたのだ。
瑛子は、全身にギブスを装着しタイヤを引きずって歩くばりの足取りでなんとか学校に辿り着いた。
教室のドアの前で、いつもの儀式。
……本当に、彼は秘密を守ってくれるだろうか。
その秘密を材料に、ゆすられやしないだろうか。
言っては悪いが、相手が悪すぎた。
だって彼、学校でも有名な……
「入んないの?」
背後から声がして跳び跳ねるように振り向くと、その有名人が無表情で立っていた。
さー、と血の気が引いていくのがわかった。
「昨日はどうも」
そう言いながら彼はドアを思いっきり開けた。
教室内のざわめきが一斉に静まる。
彼は誰とも挨拶を交わすことなく席に着いた。
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