観覧車

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観覧車

 テーマパークのタダ券をもらった。  ペア入場アトラクション乗り放題というす、デートにはおあつらえの代物だが、あいにく使用期限が迫っていて、誘った女の子の予定が合わず、暇を持て余している男友達と来ることになった。  ああ、何という味気なさ…。それでも平日ということで場内はガラガラだ。  だったら遊ぶことに徹しようと、乗れる限りのアトラクションに挑んだ。 「なぁ、次、休憩がてら、アレ乗ろうぜ」  友達がそう言いながにら指差したのは、テーマパークのシンボル的存在である大型の観覧車だった。  男二人で乗るものじゃないと思ったが、待ち時間もないし、ベンチで休憩するくらいならあれで景色を見る方がいいかもしれない。なんならデートの時のために、絶景ポイントなんかも探しておこうか。  別口の下心で頷き、俺達は観覧車に乗り込んだ。  シンボル扱いされているだけあって、観覧車からの眺めは壮観だった。  まだ半分にも差しかかっていないのに、もう地上があんなにも遠い。見える景色も遥か彼方だ。  デートなら、相手は相当喜んでくれるだろう。  そんなことを考えていた時だった。  対面に座った友達が何故か小さく手を振る。友達だけどニヤケ顔が気色悪い。 「何ニヤついてんだよ?」 「一つ前のゴンドラ、見てみろよ。女の子がこっち見てる」  言われて俺は背後を振り返った。だが、位置が悪いのか、俺から手前のゴンドラはよく見えない。 「どんな子?」  聞くと、友達は乗っている女の子のことをざっと語ってくれた。  目のぱっちりしたかわいい子で、髪は肩にかかる。見える範囲の服はピンク。一人で乗っていて、こっちを見て手を振ってくれたとか。 「あの子、もしかして俺に気があるかも」 「お前に?」 「だって、すっげぇ愛想よく笑ってくれてるし」  それは気のせいだとツッコみたかったが、こんな平日に、一人でテーマパークに来ているあげく、観覧車に乗ってるような子だ。もしかしたら俺達と同じタダ券使用者で、誰とも予定が合わず、一人で仕方なく来たということもある。だとしたら、わいわいやれる相手として、こちらにコンタクトを取ってきている可能性もあるだろう。  何にしろ、ゴンドラの位置や動き方が悪いらしくて、俺にはその子が全然見えないのだ。相手の様子が判るまで正しい判断は無理だろう。 「あの子、下で待っててくれたりしないかなぁ」
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