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「ねぇ、菜緒ちゃん」
お昼休み。
おにぎり一個だけ持っている私を誰かが呼び止める。
最近、この子に好かれているみたいだ。
「何?」
「……ごはんそれだけ?」
遠慮気味に訊いてきたその子は、心配そうな顔をした。
私の手の中にある小さなおにぎりをチラリと見る。
私は、小さく笑ってそれを電子レンジに入れた。
「うん、これだけ」
「もっと食べた方がいいよ
菜緒ちゃん細すぎるし……貧血とか起こしても大変だよ」
本当はもうちょっと食べたいんだ。
でも、食べても結局吐かなきゃ。
ケイさん好みの体型にならないとだから。
太るとすぐバレちゃう。
その時、スマートフォンが振動した。
急いでメールを確認すると、液晶画面には
《いつもの時間にいつもの場所》
その文字。
相変わらず、人使いの荒い人。
「彼氏?」
その問い掛けに吹き出してしまう。
「違うよ
バイト先の人」
「……そこって、給料いいの?」
「どうして?」
「ほら菜緒ちゃん
いつも良い服着てるじゃん
そりゃさ、私たち服飾関係の仕事目指してここにいるけどさ
……菜緒ちゃんの服、高そう」
そっか。
別にブランド品じゃないけど、服飾目指しているから値段は推測出来るよね。
今度からもうちょっと安いところで買おう。
お金は、ケイさんとの契約で普通の人よりは貰っていると思う。
“お金はあげるから、他の仕事はしないで”
ケイさんの言葉を思い出した。
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