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『どうやら全て思い出して頂けた様ですね』
昔の記憶を辿っていたA氏は男の言葉により我に返る。
『では約束通り頂きますよ、貴方の■■■を』
「……うっうっうあああああああああっ!!」
男の言葉により、恐慌状態に陥ったA氏はとにかく全速力で男から逃げようとしたその時……
――ドスッ
A氏は何かとぶつかったと感じたの同時に、何が何だか解らないまま地面に倒れ伏している自分に気付く。
更に脇腹に強烈な熱さを感じる、そしてその熱さが段々と突き刺さる様な痛みに変わってゆく事をはっきりと痛感する。
そして倒れている自身の傍らに誰かが立っている事にも朧気ながら気付く。
「…えっ?」
A氏の傍らに立っていたのは婚約者のN女史だった。
そしてN女史の手には地塗られた鋭利な刃物がしっかりと握られていた。
「……なんで?」
A氏は自分を見下すように立っているN女史にそう問い掛けるが、女史はその問に答えずそのまま数分が経ち、A氏は出血多量であっけなく事切れる。
「これでいいのよね?」
N女史は自らの手で婚約者を殺めておきながら、何の動揺も見せずごくごく自然に、先程までA氏だったモノと話をしていた紅い色を纏った男にそう尋ねる。
『はい、ばっちりOKです!貴方様が子供の頃に私と交わしたあの約束を守り続けてくれる限り貴方様はこの国一番、いやいずれは世界一の女優として活躍し続けるでしょう!!』
そう言って男はN女史の手から刃物を取り上げると、現れた時と同じ様に忽然とその姿を消す。
やがて周辺が暗闇に包まれ、街灯に明かりが灯ると児童公園は、先程この場所で起きていた事が嘘のように元の寂しさを感じる程の静かな場所に戻る……
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