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(すっげぇ気になる――)
「ちらっとでもいい。こっちを見てくれないかな」
弓道部に三年生がいないため、二年生ながら主将をしている椎名智人がいる教室の後ろの扉にくっついて、自分を見つけてほしい気持ちを込めつつ、中の様子をを窺う。
他のヤツラは方々に固まって楽しげに喋り倒しているというのに、トモヒトはひとり静かに読書中だった。
アイツが気になったのは、数日前の放課後。サッカー部の自主練で校庭を走っていたとき、茂みのむこうからバンッという紙が破れるような音が聞こえてきたのが、きっかけだった。
そういえば茂みのあっち側に弓道部があったなと、興味に惹かれて覗き見た先に、トモヒトが弓を射っていた。
学校で垣間見る姿は、ぼんやりしてるところばかりだったのに今は一転、弓道場から的に向かい合っている姿はキリッとしているのに、どこか花がある、そんな感じに見受けられた。
キンッ!
矢が放たれた瞬間、的に中るいい音がした。
そのときのトモヒトの顔が薄ら笑いというか、うっすら笑ってるような笑顔に目が留まった。それをどうしても確認したくなり、茂みから頭を出して、夢中になって覗いてしまった。そのうちに自分が、的になってみたいと思いはじめる始末。
どうしても真正面から、あの顔を見たくなった。トモヒトのメガネの奥にある真剣なまなざしに、自分が映りたくてしょうがなくなっていた。
違うクラスで部活動もまったく接点がない上に、共通の友達すらいない現在の状況は、絶望的と言える。
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