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煌めきの瞬間
彼のことを、どこかでずっと意識していた。
僕と同じく、高校で始めたという部活をあっという間にマスターし、半年後にはサッカー部でレギュラー入りしただけじゃなく、大活躍する選手に成長を遂げた。
片や僕は部員が6名しかいない弱小弓道部の主将、椎名智人高校2年。見た目も中身も成績もすべて平均点で、運動神経にいたっては残念な状態だから、しょうがないと半ば諦めている。
だけど部活を頑張る彼の姿を見たら、自然と自分も負けないようにしなければと、どんなことでも食いしばることができた。
気になる彼、吉川 煌。学年で1・2を争う、イケメンアイドル的な存在。サッカー部の次期キャプテン候補で、ポジションはフォワード。
さらさらの茶髪が太陽の下で眩しいくらいにキラキラしていて、その髪をしなやかになびかせながら風を切ってボールを操る姿に、女子は夢中になっていた。
吉川はただのイケメンってだけじゃなく、本当に誰にでも優しくて友人思いで、自分がどんなに大変でも率先して手助けするという、人としてもいいヤツだった。
特にサッカーを応援してくれる非公認のファンクラブの女子には、持ち前のサービス精神を発揮した。休憩中でも積極的に声をかけたり、リフティングをやって見せたりして、疲れているのを感じさせずに、誠心誠意を込めて一生懸命に尽くしている姿を、何度も目撃したんだ。
どうして僕が、こんなに細かいことを知っているかって? だって気になるから――。
人見知りの激しい僕には、到底無理な話ゆえに、彼の内に秘めた情熱や、いつでもどこでも誰とでも仲良くできるコミュニケーション能力の高さや、バイタリティのコツが知りたかった。
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